おおば裕子
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2022年 第4回川崎市議会定例会(9月議会)詳報・その2

第4回川崎市議会定例会(9月議会)/9月28日の決算審査特別委員会・文教分科会(教育委員会)で、おおば裕子議員が行った質問は、次の通りです。

(1)学校給食費のうち学校給食物資購入事業費について伺います。

大庭 質問①
 学校給食物資購入費は、給食食材を確保するため、学校給食物資調達を主な事業とする公益財団法人川崎市学校給食会食材調達等の業務を委託して実施しているもので、53億9947万円余が支出されています。
 提供している給食人数を校種別に伺います。保護者が負担する1食分の給食費について伺います。年間の給食実施回数と月額給食費について伺います。
 就学援助制度を利用する児童生徒の給食費の支給額と人数を伺います。

健康給食推進室担当課長 答弁①
学校給食の喫食者数等についての御質問でございます。
令和3年5月現在の児童生徒及び教職員等を合わせた喫食者数は、小学校で8万484人、中学校で3万1, 869人、特別支援学校で938人となっております。
次に、保護者が負担する1食当たりの学校給食費につきましては、完全給食の場合で、小学校は270円、中学校は320円、特別支援学校の幼稚部は180円、小学部は270円、中学部及び高等部は320円となっております。
次に、年間の最大給食実施回数につきましては、小学校は187回、中学校1年生及び2年生は165回、3 年生は155回、特別支援学校は183回となっております。 次に、月額の学校給食費につきましては、完全給食の場合で、小学校は4,600円、中学校1年生及び2年 生は4,800円、3年生は4,600円、特別支援学校の幼稚部は3,000円、小学部は4,500円、中学部及び高等部は5,400円となっております。
次に、令和3年度における、就学援助制度により負担した学校給食費の総額は、5億865万5,147円、人数は、1万754人となっております。

大庭 質問②
 月額給食費は小学校で4,600円、年間では1人50,490円です。兄弟が3人いれば、月額約1万5000円、年間15万円にもなり、子育て世帯にとって負担は大きいものとなっています。
そこで、学校給食費の無償化についてです。
 コロナ禍や物価高騰の家計の経済的な負担を軽減、子育て支援などを目的に学校無償化に踏み出す自治体が、人口の多い自治体にも広がっています。
 青森市は、中核市の中で初めて、この10月から市立小中学校など給食費の完全無償化を決めました。東京都葛飾区では、子育て支援や教育環境のため、来年度当初予算案に区立の小学校49校、中学校24校、特別支援学校1校に在籍する児童生徒の給食費を完全に無償化する目的で、予算規模は約17億円になるとしていますが、来年度予算案に必要経費を盛り込むことを決めました。世田谷区でも検討を始めました。本市が完全無償化した場合は、一般財源で約54億円になるとのことですが、
 学校給食の全面無償を実施することになれば、就学援助制度による対応と異なり、学校給食の徴収・管理業務事態が不要となるため、教育行政の費用負担軽減に資することになるのではないかと考えますが、伺います。

健康給食推進室担当課長 答弁②
学校給食費の無償化についての御質問でございますが、
学校給食費の無償化を実施いたしますと、徴収に係る事務は軽減されるものと考えられますが、現在のところ無償化については検討しておりません。

大庭 質問③
 給食費の無償化は給食費の事務負担軽減や未納問題解消につながっているという自治体の話も聞きます。
葛飾区長は「食育と子育ては自治体として支援していくべきだ。給食費の無償化は継続する必要」があるとし、「23年度以降も継続可能と考える」と述べています。教育費の負担軽減と同時に子育て世帯の支援や少子化対策など、多様な課題に位置づけられると考えますが、見解を伺います。

健康給食推進室担当課長 答弁③
学校給食費の無償化についての御質問でございますが、
本市における学校給食に係る経費につきましては、食材料費のみを学校給食費として、保護者の負担とすることを原則的な考え方としているととろでございます。
なお、物価高騰による保護者負担の軽減につきましては、国の地方創生臨時交付金を活用し、給食物資購入の増額分を補正予算に計上したものでございます。

大庭 質問④
 青森市の小野寺市長は「学校給食は学習指導要領が定める特別活動の一部である。日本国憲法が定める義務教育の無償、その射程範囲に学校給食も含まれる。自治体ごとに学校給食費の無償化が進むことは喜ばしいことではあるが、それが首長等の政策としてではなく、日本国憲法が要請する無償性の実現として全国に広まることを願って止まない」と述べています。また、学校給食法は「学校給食とその完全な無償化の実施」を各国に促したユネスコの勧告を受けて制定されていると思いますが、こうした見解について教育長に伺います。

健康給食推進室担当課長 答弁④
学校給食費の無償化についての御質問でございますが、
1951年のユネスコ及び国際教育局が主催した会議において採択された勧告につきましては、義務教育においては、できる限り家庭に補充的出費を負わせるべきではないとした上で、学校給食は、子どもたちに与える栄養的ならびに教育的利益のゆえに、差別なくすべての子どもに与えられるべきであり、学校給食の無償が不可能な場合には、父母による財政的負担を考慮し、その場合の負担は給食食材費を超えるべきではないとの内容だと承知しております。
本市の学校給食に係る経費につきましては、学校給食法等に基づき、学校給食の実施に必要な施設及び設備に要する経費や人件費、光熱水費等は公費で負担し、食材料費のみ学校給食費として保護者の負担としているところでございまして、国際公教育会議における勧告の趣旨に沿ったものと考えております。

意見要望です。
 教育長からも前提として義務教育においては家庭に補充的出費を負わせるべきではないとの答弁がありました。
 千葉工業大学の福嶋尚子氏は、こどもの「教育を受ける権利」保障するためには、学校でこそ子どもの衣・食・住が満たされなければならないと。「公教育の無償性の実現」は目的ではなく「子どもの教育を受ける権利を保障する」ための手段であり、子どもたちが当たり前の学校生活を安心しておくることができる環境をつくることが必要であり、憲法の原則に照らし給食を無償にするべきと語っています。本市でも、その観点で学校給食の無償化を検討することを要望しておきます。

(2)教育振興費のうちの川崎市高等学校奨学金補助金について伺います。

大庭 質問①
2021年度の川崎市高等学校奨学金補助金である高校奨学金制度の決算額は6,148万円余です。奨学金制度にある入学支度金と学年資金の各申請数と採用者数を伺います。

学事課長 答弁①
 高等学校奨学金の申請者等についてのご質問でございますが、
 令和3年度(2021年)の入学支度金の申請者数は220人、
うち採用者数202人、
学年資金の申請者数は985人、
うち採用者数は844人でございます。

大庭 質問②
 21年度の入学支度金制度についてです。採用者202名で18名が利用できませんでした
この制度は、中学3年前期の成績が5段階評価で3.5以上であることが申請基準になっています。不登校などにより出席日数が不足し、また成績要件を満たさない生徒などは利用できません。18名が利用できなかった理由を伺います。
 21年度の中学3年生の就学援助認定者は、1,482名で認定率は14.9%でした。入学支度金は、就学援助認定者が利用できる制度であるにもかかわらず202名の利用していない要因は何か。個別に周知はされたのか。伺います。

学事課長 答弁②
 入学支度金についてのご質問でございますが、
 本市の高等学校奨学金制度は、能力があるにもかかわらず経済的理由のため就学が困難な生徒に対し就学金を支給することを目的としたもので、奨学生として決定する上で、住所要件、所得要件、成績要件を定めております。
令和3年度につきましては、申請されても採用されなかった方については所得要件を満たしていなかったことで採用にいたらなかったものでございます。
 また、就学援助制度との採用者数等の違いにつきましたは、就学援助制度では、所得要件に該当しなくても、児童扶養手当を受給している場合には、対象となるなど、ほかに認定要件が複数あることや、成績要件がないこと等が要因であると推測しております。
 なお高等学校奨学金の募集案内につきましては、市内及び近隣の公立私立学校等にそれぞれ募集要項等を送付して周知依頼するとともにホームページ、市政だより、教育だより、市民館、図書館、情報プラザ等に募集要項を配布して周知に努めているところでございます。

大庭 質問③
 利用していない202名について、個別に周知していないということがわかりましたので、実態を把握し一人でも多く制度に結びつけるよう要望しておきます。 
学年資金についてです。
 141名が利用できませんでした。申請者は、基準を満たしているとの判断で申請しているのに、利用することができなかった理由について、伺います。コロナ禍のもとで家計が急変するなど学ぶことに支障がでていることが考えられるわけです。
 本市は、年度途中では奨学金は利用できません。しかし、世帯主が死亡した場合や災害を被った場合に奨学生としての追加決定をする緊急採用の制度があります。申請件数を伺います。学年資金を利用できなかった141名にこの制度を活用した生徒はいたのか、伺いします。

学事課長 答弁③
学年資金についてのご質問でございますが、
本市の高等学校奨学金制度は入学支度金と学年資金とで制度の目的や要件が変わるものではなく、申請されても採用されなかった方については、住所要件、所得要件、成績要件のいずれかの申請基準を満たしていなかったことで採用にいたらなかったものでございます。
また、緊急採用の申請件数につきましたは、令和元年度で7人、令和2年度で1人、令和3年度で0人であり、令和3年度に学年資金の申請をし、採用に至らなかった方から、緊急採用での申請はありませんでした。

大庭 質問④
 相模原市は、コロナ禍の影響で家計が急変した世帯は、年度途中に奨学金制度の利用ができるとしています。本市も実施すべきですが伺います。
 また、相模原市のように、成績を問わず意欲のある生徒を応援する制度に改めるべきです。伺います。

学事課長 答弁④
 本市の制度は能力があるにもかかわらず、経済的理由のため就学が困難な生徒に対し奨学金を支給することを目的としたもので、奨学生として決定する上で、住所要件、所得要件、成績要件は必要な基準と考えております。
また、県により高校生等への就学支援として、生活保護受給世帯や、非課税世帯への給付型奨学金が実施されており、家計急変により非課税相当となった世帯を含め、給付金が支給されていることや、その支給額が拡充されてきていることから、今後につきましても、国や県の動向を注視しつつ、現在の制度を適切に運用してまいります。

意見要望です。
 入学支度金と学年資金とも個別での周知を徹底することを求めておきます。
 そして、相模原市のように成績要件をなくし柔軟な対応をはかるべきです。緊急採用の要件に災害がありますが、コロナ禍による家計急変も災害として位置づけ、学年資金の利用者が増やすことを要望しておきます。

(3)教育施設費のうち、特別支援学校施設整備費について伺います。

大庭 質問①
 2021年度特別支援学校施設整備費は、決算額1,825万円余となっています。これは、狭隘化に対応するための整備に向けて中央支援学校高等部分教室については基本計画を策定し、中央支援学校大戸教室については、基礎調査をおこなった支出です。基礎調査の内容について伺います。

教育環境整備室担当課長 答弁①
基礎調査についてのご質問でございますが、
児童数の増加に伴う施設狭隘化の解消を図るとともに多様な学習内容・携帯に対応するため、校舎増築に向け条件の整理、配置計画案の検討、設計・工事概算の算定等を行ったものでございます。

大庭 質問②
 現在大戸小学校に併設している中央支援学校大戸教室についてですが、狭隘で老朽化していることから、現在あるプールを解体し増築するという計画です。基礎調査の中では、プールを整備したものと、整備しないものと複数の整備案が作成されていましたが、その理由について伺います。

教育環境整備室担当課長 答弁②
整備案についてのご質問でございますが、
当初はプールを整備することを前提とし、基礎調査を進めていたところ、昨年8月に学校プールの効率的な運用・整備の推進の方針を策定したことに伴い、併せて、プールを整備しない形での検討を行ったところでございます。

大庭 質問③
 整備案の中には、プール整備の案も作成されていたことから、短期間でプール整備しない検討が行われたということです。

 2021年8月30日に文教委員会において、学校プールの効率的な運用・整備の推進について報告がされました。今後の方針として「学校プールの新設・更新等のニーズがある場合は、まず 「市民プールの活用」「民間プールの活用」 「隣接校のプール活用」を検討するというものです。方針の決定は、令和3年8月23日 教育環境整備推進会議 (局長級会議)、 24日 教育委員会、30日文教委員会で報告したら決定。決定が前提となっていました。方針の大転換であるにもかかわらず、あまりに唐突な決定であり、市民に説明や意見を聞く場もあもたないという、決定までプロセス、あり方に問題がないのか伺います。

教育環境整備室担当課長 答弁③
 方針決定の過程についての御質問でございますが、
方針につきましては、教育環境整備推進会議での検討を経て、教育委員会会議で協議した上で、教育委員会としての方針を決定し、その結果を文教委員会で御報告したものでございます。
こうした過程は、案件ごとに様々であると認識しておりますが、いただいた御意見も参考にしながら、今後、案件に応じ、対応について検討してまいります。

大庭 質問④
 2021年8月23日に開催した教育環境整備推進会議の摘録をみると、教育長は、「新川崎新校と大戸小学校については、整備しない方向ですすめたい」と発言されているだけで、どう検討され結論にいたったのか決定のプロセスがわかりません。この2校から対応を検討すべきです。
 私たちは議会の質問の中で、児童生徒と保護者、教職員、地域住民の意見を聞くべきと指摘をし、当時、教育次長は「プール等の活用の適否のほか、保護者等への説明の在り方を含め学校としっかり協議したい」との答弁をしていました、経過を伺います。
 よもや、市民より身近なもの地域住民にも意見を聞かず決定するようなことはないと思いますが、伺います。

教育環境整備室担当課長 答弁④
水泳授業に限らず、授業手法の見直しにあたりましては、原則として、地域に対しての説明は必要ないものと考えております。
 保護者への説明につきましては、引き続き、対応方法を学校と協議してまいります。

意見要望
 「地域に対しての説明は必要ないものと考えている」という答弁には驚きました。
市民に身近な案件を教育環境整備推進会議、教育委員会臨時会の2つの会議で決定してしまう事や、非公開となっていることに疑問をもちます。
 この2つの会議では、子どもを真ん中にした議論が充分されていなかったことが残念です。そして、共通して出されていたのは、災害時の使用、防災の機能についてです。学校は災害時の避難所も水の活用が求められます。今までプールがあった学校施設が今後プールは整備をしないという大転換をするというのに、地域住民に説明も意見も聞かず強引に進めて、後で問題にならないんでしょうか。大戸小学校は、プール整備ありの基礎調査をわざわざ実施したのですから、それを示してあらためて地域も含めた説明会の場をもつことを要望しておきます。