県立田奈高校が実践している『キャリア支援』について、話しを伺いました。(11月14日)
横浜市青葉区にある県立田奈高校で高校生の就職の支援を実践しているというので、学校へ行ってお話しを伺ってきました。
田奈高校は、1978年に創立した全日制普通科の学校で、一学年8クラス計24クラス671名(2012年5月1日)です。川崎市内からも102名の生徒たちが通っています。田奈高校では、一人一人の状況に応じたきめ細かな教育展開⇒「社会の実践力」の育成(クリエイティブスクール)を実践しています。クリエイティブスクールというのは、中学校までに持てる力を必ずしも十分に発揮しきれなかった生徒を積極的に受け入れ(独特な入学者制度=選抜試験がない)、学力の定着、キャリア教育を行っているのが特徴です。
校長先生は、田奈高校の教育は「支援」軸とした学校作りをしていると、その実践内容を詳細に説明して下さいました。
まず、学習支援です。すべての授業は30人以下、特に1年生と2年生の英語と数学は半分の15人以下で授業を展開。大学生のボランティアも加わって学習状況に応じた三段階の補修システムを行っています。
こうした学習支援の中心にあるのが「生徒支援」という考え方です。様々な支援を必要とする生徒たちとの関係を先生たちが把握して信頼関係を築いていくしくみをつくっています。その中に「オン・ザ・フライ・ミーティング」というのがありますが、これは生徒とのいわゆる立ち話だそうです。「生徒の支援は、まずリスクの把握が大事。その生徒の課題がまず分からないと支援できない。そうした立ち話からのその生徒の抱えている課題をその中で見つけることができる」と校長先生は強調されました。つまり、生徒のちょっとしたつぶやき、本音の声はこうした会話の中でしっかり教師が把握するということだと理解し「なるほど」と思いました。支援教育のあり方も体系的に組み立てられていることに、とても感心させられました。
田奈高校のキャリア教育は、こうした支援教育のシステムの中にしっかりと位置づけられています。1年生で職場見学体験、マナー研修、職業インタビュー(21事業者が協力)など。2年生では、「労働法について」学び。バイターン(バイト+インターンシップ)によって自分がその仕事に向いているのか、やれるのか職業体験を通じて、バイトから正規雇用につながる生徒も生まれています。3年生では、多様な進路指導に応え就職指導支援員がきめ細かな指導を行い、生徒と一緒にハローワークなどにも行きます。就職指導支援員・相談支援員が各1名配置され、教員補助者として支援をされています。先生方は、この2人の方が生徒に寄り添って相談を受けてくれているので本当にありがたいといっておられました。
そして、田奈高校には、キャリア支援センターが設けられています。卒業(退学)後の継続的な支援、相談を解決・緩和につなげる支援です。このセンターで先ほどの2人の就職指導支援員・相談支援員が日常的に支援を行います。どういう経過で、この2人が配置されたのかうかがうと、国の緊急雇用事業で公募した方々だそうです。キャリアコンサルタントの資格をもち、大手スーパーの人事を担当された、産業カウンセラーの経験をもっているなど、実務処理などもすぐれた方々で、学校サイドでは対応できないこともこなしてもらっているとのことでした。キャリア支援センター担当の先生は、「この2人は、一年間限りの雇用であるために、自身も次の職業を考えながら生徒の就業支援を行っているということに、矛盾を感じている」とのことで、川崎市の「キャリアサポートかわさき」で頑張っておられる求人開拓員の方々も同じなので気持ちがよくわかりました。
未就職で卒業した生徒たちには、6月にダイレクトメールを送り、就職状況を聞くようにしているそうです。キャリア支援センターがあることで、生徒にとっては拠り所になっているというのが強く感じました。
校長先生は、「求人数は減り、求人の質的劣化が激しい。従前のやり方では内定者は増えない。早期の対策が必要」と言います。こうした支援によって、2012年は求職者が倍増しました。
校長先生、センター担当教員(事務局長)の先生をはじめ、生徒一人ひとりが抱えている課題をしっかり把握して、支援に取り組んでいるに姿勢に感動して帰ってきました。